神の口笛
第7章 7
「半分に割って、リスにあげた?」
「そう!正解。よくできたね。」
ルイはクシャっとエマの髪を撫でた。
「でもやっぱり文字は難しい。やる気が出ない…。」
「グレイにも教わってるんだろ?」
「うぅん。私がめんどくさがるから、いつも読んでもらってばっかり。」
「そっか。……エマは…――」
「何?」
「グレイが好きかい?」
「好きだよ…?」
突然なにを聞くのかと思ったが、素直に答えた。
「僕のことは?」
「好き。」
エマは本当に、グレイもルイも、ステラも皆好きだった。
しばらくして、ルイに促されエマはベッドに入った。
「エマが眠ったら自分の部屋に戻るよ。さ、眠って。おやすみ」
「ん…」
眠そうに目をこすり、繊細なまぶたの皮膚がゆっくり落ちた。
ルイはしばらくその寝顔を眺めてから、優しく唇を重ねる。
「エマ…。」
エマは寝ぼけながらルイにすがり、甘えた口調でその名を口にした。
「んぅ……グレイ……――」
抱き着こうとするエマをそっと制し、ルイは去った。
手に入らないことくらい、ずいぶん前から分かっている。
それでもエマのそばを離れることなど出来ない。
グレイがもし、いなかったら……―――
よからぬ考えを起こしそうになり、ルイは思いを断ち切るように自室へと向かった。
…
大祭りでは、グレイは幹部のためなかなかゆっくり一緒に過ごせなかった。
今日は久しぶりに一緒に寝られる日だ。
湯浴みをし、北棟を訪れる。
入り口前では相変わらず、別の棟の女兵士たちが男を吟味していた。
北棟の男は特に人気があるんだろうか。
今宵もSEXにいそしむ男女が何組いるだろう。
そんな事を考えながらグレイの部屋をノックし、中に入る。
髪を梳かしてもらい、時折あたるあたたかい指先に、ぞくりと震えが背を走った。
それを分かった上で、グレイは思わずエマの耳や肩や腕を撫でた。
下腹部が熱くなる不思議な感覚に、エマは体を縮ませる。
「どうした?具合が悪いのか?」
「お腹の奥が…。ここが、きゅんとする…つらいの。」
それは紛れもなく身体の疼きなのだが、エマにはまだはっきりと分からないのだ。
「おいで。調べてやる。」