神の口笛
第8章 8
秘部に、それも舌で触れられるなど初めてで刺激が強かったのか、エマはすぐに果てた。
開かれた太ももはふるふると小刻みに震え、臀部の筋肉が断続的に収縮した。
……波が過ぎ去ってから、グレイは最後に秘部へキスするようにして唇を離す。
「エマの蜜は甘いな。」
ジッと瞳の奥を射抜く視線に、エマはまた秘部がきゅっとするのを感じた。
今、ものすごいことが起きた……
グレイが私の…そこを舐めて…すごく気持ちよくて……
思い返した途端、舐められたということがとてつもなく恥ずかしくなった。
そしてステラに聞いた、”愛撫とはあそこを触ったり舐めたりする事だ”という言葉が思い返された。
これは紛れもなく前戯、なはずだが…やはりSEXはしていない。
一体どういう事だろう……。
しかしそんな思いも、グレイの大きな抱擁によっていつしか薄れてくる。
「愛する、って、なに?」
「どこでそんな言葉覚えた。」
「前にソフィアが言ってた。昔はキスやSEXを愛する人としたものだって。」
「まぁ、そうだな。愛っていうのはいろいろある。家族愛…兄弟愛…師弟愛。ほかにも。」
「私もいつか誰かを愛したり、愛されたりするの?」
「ああ。きっとな。」
「そしたら、どう思う?」
「…。お前が幸せになれるなら、俺は手放しで祝福する。でも今はとても、信頼できる奴がいないな。」
「ふぅん…。」
なんとなく、前戯のことは聞けなかった。
「……っはあ…――」
エマが眠ってから、グレイは椅子に座って自身を慰めていた。
これまで堪えてきたが、今夜のエマへの欲情は振り払えないものだった。
淡い桃色のクリトリス、余分な皮膚のない陰唇、溢れてくる愛液、その甘い香りと味……。
ついさっき起こったその官能的な現実を思えば、グレイが上り詰めるのは容易だった。
「…う…っ…――」
果てる瞬間に想像してしまったのは、エマの中…深いところに、思い切り放出する場面だった。
自慰にふけるなど、いつぶりの事だろう。
手のひらで受け止めた精液の量が、その長さを物語っていた。
エマへの言葉にできない罪悪感から逃れるため、グレイはしばらく本を読んでやり過ごした。