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神の口笛

第8章 8




2ヶ月後…―――――

世界中で戦争が起きた。


革新的な国や人々は、古臭い宗教を一掃しようと結託し、クベナはもちろんその他の宗教団体をも無作為に襲った。


古臭いと言われても放っておいてくれればよいのだが、様々なしきたりや儀式がよそ者の目には「脅威」「恐怖」と写ってしまう。


デワトワ国では9割がクベナ信者で、そうなると国民のほとんどが危険にさらされ兼ねない。



この日、主要人会議によって「この戦が収束するまでの間、隣のスピリル王国と協定をむすぶ」という決定がなされた。


デワトワ国は島国。スピリルは海を隔てた向こうの中規模の国だ。そこもまた、国民の8割以上がクベナ信者とされる。

統治でなくあくまで対等な協定だが、事実上はデワトワ国が弱い。

戦力も兵士の人数も、文明も、国民への保証制度なども、スピリルはとても優れていた。

外交がとてもうまいと言われているスピリル国王のことは、デワトワ国の民もよく知っている。







いざ始まった戦争だが、ガルダン基地に直接的な被害はまだ無かった。


大規模な戦争の際には兵士の移動がほとんどなく、皆それぞれが持ち場の防衛に徹する事になる。

敵が多いため、派遣隊を出してしまうと今度はその元の基地が手薄になり、攻撃に屈してしまう恐れがあるのだ。


あくまでクベナは自発攻撃をしないので、訓練をしつつひっそりと戦に備える日が続く。




「今日も攻撃なかったね。」

湯船に浸かりながらステラが言った。

少しの緊張感は残るものの、今日という日を何事もなく終えられて安心したのが分かる。

「そうだね…。どうなっちゃうのかな、この戦。」



これほど大きな規模で、隣国と協定を結ぶほどの戦はデワトワ国の歴史上でも初めての事だ。

当然、兵士たちにも多かれ少なかれ動揺は起こる。

いつもは和やかさもあった湯浴み場だが、戦が始まってからやはりどこか硬い空気が流れていた。



ガラガラ、と湯浴み場の戸をあけて外へ出ると、なにやら見慣れない男たちがこちらのほうを見ている。

「お偉いさんかな…今日到着って通達あったよね?」

ステラの言葉で、そういえば今朝の点呼の時に”スピリル王国の軍が到着する”と発表があったのを思い出した。


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