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雨の降る夜は傍にいて…

第4章 台風12号MUIFA(ムイファ)

 41 新たな恋愛関係

 やはり9年間という時間は長かった…

 わたしと浩司の明日からの関係が、不倫という関係ではなくなり、普通の恋愛関係になるというのだ。
 
 あの頃、あんなに悩み、苦しみ、足掻き、そしてようやく乗り越えた不倫という関係だったのが、不倫ではなくなる…

 あの頃の関係を乗り越えた為に生まれた、他人から見たら不純ともいえるわたしの恋愛観とは、明日からは全く違う恋愛関係となるのだ。

 えっ、もしかして、わたしは…

 不倫じゃなくなった事実に物足りなさを感じているのかっ…

「だから全部問題ない、全部オーケーなんだよ…」

 なんとなくなのだが、彼のその言葉にときめきを感じてこないのである。

 あの頃は、奥様という存在に身を焦がすかの様に焦れて、不惑の想い、罪悪感に苛まれていたというのに…

 あの頃は浩司の事を好きになればなる程に、愛すれば愛する程に、苦しくなっていたのに…

 そして自分自身に夢中にさせたくて燃え上がっていたのに…

 全くときめきを感じてこないのである。

 いや、違う、余りの突然の流れに、そして予想すらしたこともなかったこの現実に、まだ実感が湧かなくて、ただ、戸惑っているだけなんだ…

 昔より、より安定的に、より深く、これから愛し合えるのである。
 こんな嬉しい事、これ以上の嬉しい事実はない筈なのだ。

 もう誰にも云えない、隠さなくちゃならない、他人の目を気にしなくちゃならない関係ではなくなるのである。

 正々堂々と愛し合えるのだ…

「うん…
 嬉しいわ…」

「まさか、俺も、またゆりに、こうして逢えるとは思ってもいなかったよ…」

「うん、わたしも…」

 だが、昔の様なときめきは、今はまだしてこないのだ。

 きっと、余りにも突然過ぎなのかも…

 そうに違いない…





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