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雨の降る夜は傍にいて…

第5章 秋冷え…

 46 朝の想い

 ブー、ブー、ブー…

「………………はっ…」
 朝5時半、目覚まし時計代わりの携帯アラームで目を醒ます。

 あ…
 隣に、浩司が寝ていた。

 きっと、昨夜のあまりにも激しい、そしてやや異常とも受け取れる淫れ方に心配してくれてこうして朝まで居てくれたのだと思われる。
 多分、昨夜、奥様と娘の三人で食事をし、わたしが激しく心を傷つけ、そのせいの甘えの淫れと思ったのに違いない。

 確かにそれまでのわたしは、そうした嫌な出来事、例えば、いや、ほぼそうなのであるが、大切なバスケットの試合に負けた夜はこうして淫らになり、彼に抱かれ、甘えて、そして励ましてもらっていた、という事実があった。

 たがら昨夜も、多分に漏れずそんな感じで淫れたのだろう…
 と、思ったのであろう。

 そんな浩司の優しさを感じ、逆にわたしは心が痛んだのである…

 それは、昨夜の淫れに関しては今までの淫れた意味とは全く違うからであるから。

 昨夜の淫れ…

 背徳感と罪悪感からもたらされた、禁断の、そして麻薬的な欲情の、不惑な不倫のスパイス的な興奮からの昂ぶりの結果の淫れだったからである…

 『不倫』という禁断の、不貞な愛の関係にも係わらず、わたし達はその不倫の関係の危うさやヒリヒリとした背徳感や罪悪感が全く湧かない安定している普通の恋人同士の様な関係に、わたし自身がそんな穏やかな関係に刺激が欲しくて求め、いや、切望した結果がもたらしたモノであるのだ。

 だから彼の優しさに心が痛んでしまっていたのである…

 だが、嬉しい思いもあったのだ、それは久しぶりにこうして朝まで抱いて寝てくれていたからである。
 殆どの夜は、寝落ちしたわたしをそのまま起こさないようにそっと部屋を出て、仕事に戻っていたから、それがうれしかったのだ。

 やはり朝まで抱かれていると、なんとなく心の充足感が違うような気がするのである…

 わたしは彼の寝顔を見つめる。

 浩司、ごめんなさい、アナタの思っている事とは違うのよ…
 顔を見つめながら、そう心の中で謝罪した。

 わたしは…
 
 わたしは…

 禁断の快感に手を出してしまったの…





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