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雨の降る夜は傍にいて…

第5章 秋冷え…

 47 傍らの朝

 わたしは…
 わたしは…
 禁断の快感に手を出してしまったのだ…

 多分、もう後には引けない、つまりはこの刺激が無くてはダメかもしれない…
 アンタッチャブルな快感を味わってしまったのかもしれなかった。

 ただでさえ浩司との抜群のカラダの相性とテクニックにより、過去に味わった事のない様なセックスの快感と絶頂感を感じているくせに、心の刺激への切望の想いから更に禁断の刺激の快感を味わってしまった…

 つまりは普段でも十分堪能できていたセックスの快楽という麻薬を、更に強い麻薬を味わってしまったということと同じであり、この快楽により今までの十分な快感が物足りなくなってしまったかもしれない…と、いう恐れが出来てしまったのである。

 わたしはこれからどうなってしまうのだろうか…
 浩司の寝顔を見ながら、そう考えていた。

 いけない事をしてしまった…
 わたしは己自身の愚かさの罪悪感を感じ始めていたのである。

 これからもっと刺激が欲しくなってしまったらどうしよう…
 こうした禁断の快楽は止めどもなく、そして終わりがないのである。
 
 もっと、もっとと刺激を求めてしまうのではないのか…
 ジリジリとした焦燥感が湧いてきていた。

 だが、一つだけ確信した事もある、それは、この事により、もう奥様の存在感が怖くはなくなった事であった。

 完全に、奥様に対するコンプレックス的な恐れがなくなったのである…

 今までは奥様の存在感を感じただけで、ジリジリと心が焦れて、焦燥と背徳の想いを感じてしまっていたのであるが、昨夜のセックスの刺激のスパイス的な想いに代えてからはそんなコンプレックス的なモノが完全に喪失したのであった。
 そしてその代わりに奥様の存在感を感じたら、色々な意味での心の昂ぶりを感じる様になったのである。

 それに、この時は分からなかった、いや、分からくて当然なのであるが、わたしの心の中で、何かが弾けた様なのであった…
 心の中にあった何かの殻が破け、弾けた様なのだ。

 そしてその効果は、わたしのバスケット指導にも露骨に露わになったのである。

 それはこの後、秋の地区リーグ戦で現れたのだ…

 だが、今、こうして浩司の寝顔を見つめている時には勿論、わかりようもなかったのである。

「う、ううん…」

 彼が寝返りを打った…




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