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　65　不惑のシチュエーション

「こんばんは……あっ」
　なんとそこには奥様と共に浩司も居たのである。

「こんばんは、ゆり先生…」
　そう浩司は挨拶をしてくる。

「あ、は、はい、マスター…」

「あ、美紀谷先生、わざわざすいません…」
　そして奥様も挨拶をしてくる。

　奥様とその夫であり、わたしの愛する男である浩司と、そしてわたしの三人が初めて同時に揃ったのだ。

　そしてわたしの胸は

　ザワザワと騒めき…

　ドキドキと高鳴り…

　ヒリヒリと背徳感と罪悪感に昂ぶってきていたのである…

　だが、しかし…

　目の前に一緒にいる浩司の目も昂ぶりの輝きをしていたのだ…

　彼もまた…

　彼もまた、ヒリヒリとした背徳感と罪悪感に酔い痴れている様な昂ぶりの目をしている…


「実は美紀谷先生…」
　三人で個室に入り、わたしの対面に夫婦二人で座るなり奥様がそう話しを切り出してきた。

　だが、わたしはこの禁断の昂ぶりに、なかなか奥様の言葉に集中できないでいたのである…
　なぜならば、昨夜、あれほど激しく愛し合った禁断の不倫の関係の愛する男が、この不惑といえるシチュエーションに、しかもわたしの目の前に存在し、昨夜同様の昂ぶりの輝きの目をしているからである。

　わたしの脳裏に
　ザワザワ…
　と、激しく胸が騒めき
　ヒリヒリ…
　とした、背徳感と罪悪感が巡っていたのである。


「……………なんですよ…」

「…えっ、あっ、すいません、もう一度お願いします……」

　この不惑のシチュエーションに、全くわたしの頭の中には、奥様の言葉が入ってこないのである…