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雨の降る夜は傍にいて…

第7章 五月雨(さみだれ)

 7 死刑宣告

 入院中は意外にたくさんの方々や人々が見舞いに来てくれたのだが…
 それら全部がバスケット関係者であった。

 そして、そこで時間が経つにつれ…

 初めてわたしにとってのバスケットというモノの重大さ、重要性、存在感を痛感したのである。

 振り返ればわたしはバスケットしかしていない…

 高校受験も、大学受験も、皆、バスケット評価…

 小学三年生から現在までバスケット中心の生活…

 家族旅行も、行事も、友達と遊ぶのも、全てバスケットの練習、試合の都合で決めていた…

 いや、バスケット部以外の友達もいない…

 唯一は、あの高校二年時に一年間付き合った、交通事故で亡くなった
『たーちゃん』だけ…

 つまりバスケットはわたしの全てなんだ…

 無くてはならない存在…

 人生そのものなんだ…

 そこでバスケットプレイヤーとしての再起不能宣告の大きさ、重大さ、深刻さを理解し、実感した。
 
 バスケットがもう出来ない…

 それはわたしのこの20年間の人生の終わりを意味し、そして絶望を意味する。

 まるで…


 まるで、死刑宣告じゃないか…

 一気に目の前が、いや、回りの全てが真っ暗闇に感じたのである。

 そして心が狂い始めたのだ。
 すっかり自暴自棄になったのである。

 まるで心が死んだようになった。
 何に対してもヤル気も、気持ちの昂ぶりも全く起きない。

 そして手術後は歩行補助器具が無ければ普通に歩けないからリハビリが必要となるのだが、またこのリハビリがきつくて辛い…
 そしてプレイヤーとしての死刑宣告である再起不能を言い渡されていたから余計にヤル気持ちも起きない。

 だけど、このまま足を引きずって生きて行く訳にもいかないから、仕方なくリハビリはやったのだが…
 気力が全く起きないが為に、リハビリになかなか通う事も出来ないし、集中もできないでいたのであった。

 だが、ある日、リハビリにいやいや通い始めて約一カ月程度、そのリハビリ施設で彼、大学三年秋からの彼氏
『山中 遼』と出会ったのである。





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