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願望アプリ

第1章 願望アプリ

 外に漏れないように我慢してるみたいだけど、それがかえって生々しさをかもし出している。
 女子の喘ぎ声と、肌と肌がぶつかる音が響く。


 こんなところでヤってるのは一体誰だ!?とチラッと覗き見すると、男の姿を確認できた。


 中島だ。
 中島が知らない女子とヤっている。


 あまりに衝撃的な光景に、僕は手に持っていた教材を落としてしまった。


「誰っ!?」

「やばっ……」


 僕は教材をそのままにしてその場から立ち去ろうとしたけど、飛び出してきた女子に体当たりされてよろけてしまった。


「なんだ、祐介か」


 呆然とする僕に、中島はベルトをカチャカチャと直しながら話しかける。


「もう少しでイキそうだったのに、邪魔するなよな」

「……っ……」


 中島がなんだか別人のように見えた。
 よく見れば目の下には隈ができている。


「よくないよ、こんなこと……」

「しょうがないだろ、相手にしないとあいつらしつこいんだ。昨日なんて自宅にまで押しかけてきてさ……おかげで俺は体調崩すし、家に帰れないわで散々だったよ」

「……」

「あ、でもカラオケ店に逃げ込んだら、なぜか美晴が来てさ」

「えっ!?」

「ごめんな、祐介。俺、美晴とキスしちゃったわ」

「!」

「あいつ、俺のこと好きなんだって」


 頭の中が真っ白になった。
 美晴ちゃんの笑顔が消えていく……。


 マジかよ……
 美晴ちゃんのこと、ずっと小学生の時から好きだったのに、こんな奴に簡単に奪われるなんて……。


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