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願望アプリ

第1章 願望アプリ

「あ、あのさ……」

「あ~あ、一晩中泣いたから目が腫れてるよ?」

「……えっ……」


 なぜそのことを京子ちゃんが知ってるんだ?


「よしよし、私が慰めてあげるね」


 そう言うと、京子ちゃんは背伸びをして僕の頭を撫でた。


「ふふっ、祐介くん、かわいい」

「……っ……」


 どうしたらいいかわからず戸惑ってると、ガタンッと電車が揺れた。


「あっ」


 京子ちゃんが僕の体にもたれかかってくる。その時、フワッとどこかで嗅いだことのある匂いがした。


「ごめんね、けっこう揺れるね」


 そう言いつつ、京子ちゃんはまだ僕の体にもたれかかったままだ。


 ああ、そうだ、思い出した。
 この香りは、美晴ちゃんの……。


「ねえ……あのお願い、本当に聞いてくれる?」

「え?」


 すると京子ちゃんは僕の手を掴むと、自分の胸の辺りまで引っ張った。


「!?」


 指先が彼女の柔らかい膨らみに触れると、京子ちゃんはビクッと体を震わせた。


「……んっ」

「!?」

 際どい声にビックリして、僕は思わずコートで京子ちゃんを隠す。
 周りを見ると、何人かがこっちを見ていた。気づかれた?


 京子ちゃんは吐息を漏らすと、上目使いで僕を見た。
 

「もっと触ってもいいよ……」

「!?」


 嘘だろ……こんな場所で?
 いやいや、なんでそうなる?
 僕たち、付き合ってもいないのに!



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