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願望アプリ

第1章 願望アプリ

「祐介、やったじゃん」


 隣の席にいた中島がニヤニヤと笑っている。


「よくないよ、知らない女が僕の写真を見てるかと思ったらゾッとする」


 それが美晴ちゃんだったら許すけど。


「強がんなって。でも良かったな、これでバレンタインチョコ1個はゲット確定だな」


 そういう中島は昨年のバレンタインデーに13個チョコをもらったのを僕は知っている。


「てか、俺もさっき写真撮られたんだけどさ……知ってるか? 願望アプリのこと」

「願望アプリ? なんだよそれ」

「最近流行りだしたアプリなんだけど、なんでも好きな人の写真をそのアプリで撮ると、好きな人そっくりのアバターが出てきて、乙女ゲームみたいにユーザーの願望を叶えてくれるらしいぜ」

「はあ?」


 僕はすっとんきょうな声をだした。


「ユーザーの願望って……例えば?」

「そりゃあ願望といったら、好きな人と会話したり……ようはイチャイチャしたいってことだろ」

「……っ……」


 好きな人の写真を眺めるだけじゃなく、好きな人のアバターを作って自分の願望を叶えるアプリか……。
 確かに望みのない片思いの相手だったら、本人じゃなくてもアバターで願望を叶えられるなら嬉しいかもしれない。


「あれ? じゃあ、さっきのは……」

「ああ、たぶんそのアプリで撮ったんだろうな」

「ええっ! じゃあ今頃、彼女のスマホには僕そっくりのアバターが作られていて、彼女に好きだよとか囁いてるわけ!?」

「だな、たぶん」


 それはちょっと怖いかも……と身震いした。
 僕が好きなのはこの世でたった一人、美晴ちゃんだけなのに。


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