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願望アプリ

第1章 願望アプリ

***


 おかしい。
 あれから美晴ちゃんはスマホを眺めながらずっとニヤニヤしている。


 まさか美晴ちゃんも例のアプリを……?
 一体誰を撮ったんだ?


 まさか僕?
 隣のクラスの京子ちゃんに頼まれたなんて言ってたけど、本当は恥ずかしくて嘘をついて僕の写真を……。


 だったらそんな偽物じゃなく、直接僕と話してくれればいいのに。


 願望アプリか……。
 僕もやってみようかな……。
 

 ふとそんなことを思ったけど、偽物の美晴ちゃんと話しても虚しくなるだけだからやめた。
 よしっ、美晴ちゃんに話しかけてみるか。


「美晴ちゃん」

「……」

「美晴ちゃん?」

「……」

「みは」

「なに?」


 美晴ちゃんは不機嫌そうに僕を見る。


「いや、特に用はないんだけど……さっきから何してるの?」

「えっ……な、何もっ……何もしてないからっ……」


 美晴ちゃんは動揺しながら席を立つと、慌てて教室を出て行った。
 明らかに挙動不審だ。


 しかしそんな挙動不審な行動をしているのは、美晴ちゃんだけではなかった。
 クラスのほとんどの女子たちが、休み時間誰とも話さずスマホばかり見ているのだ。そしてたまに一人で笑っている。
 

 恐らくみんな願望アプリをやっているに違いない。そんな女子たちの姿を見て、クラスの男たちはため息をつく。


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