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願望アプリ

第1章 願望アプリ

「なんか今年はチョコもらえなさそうじゃね?」

「義理チョコもなさそうだよな」


 僕も同じことを思った。
 もしかしたら彼女たちは現実の男に興味がなくなってしまったかもしれない。
 その時、後ろからガッと肩を掴まれた。


「祐介、頼む! 助けてくれ!」


 僕の肩を掴んできたのは中島だった。
 中島はどこかから全力疾走してきたみたいで、キョロキョロするなり掃除用具入れのロッカーの中に隠れた。
 そのあとすぐにバタバタと一人の女子が教室に入ってくる。


「ねえ! 中島くん、見なかった!?」


 鬼の形相でそう聞かれ、僕は咄嗟に頭を左右に振った。


「今日デートするって約束したのにっ……なんで他の女とも約束してんのよ!」


 女子は怒りに任せて思いきり椅子を蹴ると、バタバタと教室を出ていった。


「こえ~……なんだよ、あの女」


 僕含めて男たちが唖然としているにも関わらず、女子たちは全く気にもしてない様子だった。というか、スマホに夢中になって気づいてないみたいだった。


「中島、二股はだめだろ~」


 掃除用具入れのロッカーから出てきた中島に他の奴が声をかける。


「ちげぇよ、俺は誰ともそんな約束してねーよ! なんかよくわかんねぇけどさ、あいつらリアルとアプリを混同してんだよ」

「!」


 まさか、そんなことが……?
 だとしたら相当のめりこんでるぞ。
 大丈夫なのか、そのアプリ……。


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