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片恋は右隣

第3章 ちょっと先走りすぎじゃないですか


かなりこっ恥ずかしいけど、話が通じないなら仕方がないと思ったから。

「気になってないとあんなことしません。ヤキモチ妬くより、何度かデートしてお互いを知る方が先じゃないんですか」

「そう……かな?」

自分の頬っぺたを触りながら彼はまだビックリ顔だった。

「それに、わたし避けてるんじゃなくて、意識し過ぎてまともに倉沢さんの顔が見れないだけです、単に。 だから……むぐ」

だからこの人。
公道でいきなり抱き締めないで?

「もしかして、おれの彼女はかなり可愛いのか」

「彼女って……だから、人の話を」

「聞いてた。 三上さんは照れ屋で不器用で繊細なんだよな。 ヤバい可愛い刺さる。 もう連れて帰りたい」

刺されて死ねばいいのに、とまでは思わないけど。
なによりもう少々落ち着いてはくれないものか。

「……倉沢さん、なんでこっち帰ってきたんです?」

彼って正直、もっとクールな人かと思ってた。
真面目な話を振り、ぐいぐい胸を押して抵抗してたら、やっと離してくれた。

「前の会社ブラック過ぎて、都会も肌に合わないし。 あと、彼女とも上手くいってなかった。 浮気されても二年ばかしズルズル付き合ってたけど、物理的に離れなきゃ、たぶんおれからは無理って思って」

「……そうですか」

ほぼほぼわたしとおなじ理由だ。

今なら達観出来るけど。
長い期間を近い距離で付き合ってたら、情が移ったりこの人にはわたしがいなきゃなんて、人ってたまにウエットな感情に振り回される。
……倉沢さんもそうだったんだろうか?



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