片恋は右隣
第3章 ちょっと先走りすぎじゃないですか
別れたらハイ次なんて、悪いことを言った。
なので歩きながらわたしは頭を下げた。
「すみません、変なこと聞いて」
「いいよ。 だから余計、三上さんのことで浮かれ過ぎたのかも。無愛想なわりには、なにしてても丁寧に教えてくれたし。 昔からそうだよね。 部室で後輩の面倒よくみてた」
忘れてなかったうえに、多少は自分のことを見ててくれたんだろうか。
そんな彼の言葉に驚いた。
「で、たまに笑うとすげえ可愛いし、昨晩もイチイチ反応良いし。 なんか堪んないなあって……顔、真っ赤だけど。 これもアウト?」
「あ、アウト……」
「またそういう反応されると……おれもだな」
諸々思い出すと恥ずかし過ぎる。
目的のお蕎麦屋さんがとっくに通り過ぎていたのに気付いた。
彼にそう言って謝ると、そこのモスででも買って外で食べようかと笑う。
公園というほどでもないけれど、わたしたちは会社に戻る道の途中にあるオフィスビルに隣接する、広場の中にあるベンチに腰をかけた。
目の前の植え込みにはコスモスの繊細な葉が初秋の風の揺れている。
ところどころにピンク色の小さな蕾をたたえていた。
「たまには外もいいですね」
「じきに出掛けるにもいい季節になるなあ」
そんな言葉を交わしながらしばらくめいめいに食事をとった。
「……今日また三上さんち行っていい? で、そのまま明日は一緒に出掛けられるし」
そう訊かれてむせそうになった。
一度目は偶然の産物。
そして彼が口にしたせっかちな二度目の約束。
それには言い逃れ出来ない、意思というものが存在する······のかも知れない。