片恋は右隣
第3章 ちょっと先走りすぎじゃないですか
でも、昨晩感じてたような懐疑心がいまの自分にはない。
もっと彼と話をしたいと思う。
「良いですけど。 でもわたし、今晩は遅く」
「おれも行く」
「はい……は?」
「親睦深まるし? なんか問題ある?」
さらっと言ってきた彼に、どこかいい雰囲気だったのが消え去った。
ついでに、わたしに多少ばかし残ってた会社モードがすっぱ抜けた。
「あるよ! 歓迎会の下見についてくる主賓って何者なの? それに、社内恋愛禁止なんだようち」
「それは誤魔化すし」
その性格でどうやって?
「いやいや!! 無理だから。 倉沢さんには絶対無理だから! 二時間で切り上げるから。 っていうか、そんなにわたしが信用出来ないの?」
意外、といった顔で彼が首を横に振る。
「そうじゃないよ。 誰かに向かっておれの知らない表情見せる三上さん見れないのが嫌なだけ」
「………」
それはいくらなんでもどうにもならない。
この人イケメンだけど。
賢いし運動神経もいいけど。
ちょっと残念な人だ。
ついうっかり、本音が漏れ出た。
「倉沢さんって、う、ウザいよね……?」
「でしょ? 我ながら自信あるよ。 うーん、分かった。 ここは三上さんのペースに合わせる。 今晩と明日ご褒美あるし」
ご褒美。
それはベッドのことだろうか。
デートのことだろうか。
実はわたしにとっても、なんて言ったらまた倉沢さんが暴走しそうで止めておく。
結局時間がなくてファーストフードになったランチの帰り。
整った顔を少々崩した彼が言った。
「でもさ、たぶんおれら、相性いいと思わない?」
……実はわたしもそう思わないでもない……たぶん。