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片恋は右隣

第3章 ちょっと先走りすぎじゃないですか


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それから私は午後の仕事をこなし、花邑くんと待ち合わせてから、今晩の目的地へと向かった。

たしか以前ここに来たのは二年ほど前だったと思う。
でも、お店の雰囲気が変わっていなくてよかった。
ひと口の冷たいカクテルと、ちょうどいい暗さの間接照明にほっと息をつく。


「コースメニュー、わりとお手頃ですね」

「雰囲気や味も悪くないでしょ?」

貸し切ったら人数的に立食になりそうだけど。
所々に小休憩出来るハイテーブルと、外にはオープンスペースもある。

フリードリンクの数も豊富で、ソフトドリンクやカクテルに加え、日本酒まで置いてある。
メニューを見ながら彼がなんどか頷く。

「バッチリ。 こういうのって、女性の意見聞くのが一番正しいですよね」

その日お勧めの単品をいくつか頼み、それらをつまんだ。
花邑くんは店員さんと歓迎会の日取りや内容なんかを話し合っていた。

その合間に着信が入る。

画面を見ると倉沢さんからだった。

『もうじき終わりますよ』

『うん。 向かいで待ってるから』

ん? 向かい?

目を上げ、わたしが店内と外を隔てているガラスに視線を移した。
道路向かいにはマックがあり……その店内、道路と並行にあるカウンター席。
そこでヒラヒラ手を振ってるのはまさかの倉沢さんだった。

「うそでしょ」

小さく声に出てしまった。
なんだかニコニコしてこちらを見守っている様子。

どっかのストーカーじゃあるまいし。
まだ会社帰りのワイシャツ着てるし、一時間以上、ずっとあそこに居たんだろうか。

怖いの一歩手前だ。


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