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片恋は右隣

第3章 ちょっと先走りすぎじゃないですか



「風呂アリガト。 腹減ったーっ……て。 ……三上さん、なに後ろ向いたまま固まってんの?」

リビングのローテーブルの傍に座り込んで動かないわたしに倉沢さんが話しかけてきた。

「……デリカシーの意味を考えてたんですよ。 すみませんでした」

「は……?」

テーブルの角っこを挟んで腰をかけた倉沢さんが不思議そうな顔をした。
わたしが思い返していた概要を話すと、はて? という表情をして、視線を彷徨わせる。

「んなことあったっけ? てか、よく覚えてんね」

「憧れてたって言いませんでした? そういう気遣いも含めてですよ」

「っんか、照れるけど。 男と女は違うから。 確かにおれ、付き合ってた子からデリカシーないってよく言われたよ。 さっきも三上さんを悩ませるみたいなこと、おれが言ったんだよね? ごめん」

そう言って頭をなでてくるけど、なんだろう。
もやもやする。

「……つまり、男性には出来るのが女性に出来ないと?」

「ん? そうだよ。 色々と。 だって体の造りも脳の造りも違うんだから」

ムッとして言い返そうとすると「ああ、逆もだからね」と言葉で制する。

「同一視し過ぎたら諍いが増える。 おれは思ったことすぐ言っちゃうし、三上さんはそういうときに冷静に諭してくれるね。 今食ってるこれも、わざわざあっため直してくれたよね。 おれにはそんなとこに気を遣える頭はないわけで」

そう言いつつ、まだほんのり湯気の立つ野菜炒めなどを黙々と口にする。
ごくんと飲み込んで、その続きを言う。

「……で、いまはなんか悩んでる三上さんをなんとかしてあげたいなあって思う。 そう出来んなら、おれは嬉しいんだけど」

「……すみません」

この人根本的に変わってないなあ。


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