片恋は右隣
第4章 幸せになったらダメなんですか
「……だっ…てなんて言っていいか……わたしが勘違いしたのも、ホントだし」
「だから向こうも付け上がるんですよ。 指輪って以前おれに聞いていたやつだよね。 あれって倉沢さんのことだったんだ? まあ、それに。 実は出来ちゃってマス、なんて言えませんしね」
彼が後ろ向きになって話してくる。
ガコン、と自販機から飲み物が出てくる音がかぶさり、一瞬内容を聞き違えたのかと思った。
「……え?」
「先週末、店の帰りにさ。 聞きたいことあっておれ、道戻ったんだよね。 したら三上さん、倉沢さんと待ち合わせしてたデショ?」
「そ、それは」
「ふふっ、顔青いよ。 やっぱ三上さんってウソ下手だよねー。 そういうとこもいいけど」
内容もだけど、口調も違う。
淡々と話してくる彼からは、いつもの人好きのする様子が感じられなかった。
「花邑くん……?」
「いや、でも。 彼女らの気持ちも分かんないでもないよ。 イキナリ綺麗にしてきてさ。 おれと三上さん、同じフロアっても、ここでこんなに一緒になるって今まで偶然だと思ってた?」
「え? う……うん? そうだけど」
わたしは始終当惑するような表情を浮かべていたと思う。
彼がなにを言いたいのか分からなかったから。
「おれの席から三上さん通りがかるのが見えるから、チェックしてたんだよ。 ……酷いなあ。 ガード固そうだから慎重にしてたのにさ。 今さらパッと出のオトコになびくとか」