片恋は右隣
第4章 幸せになったらダメなんですか
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数日が経ち、状況はちっとも変わらないままでいた。
自分のデスクに座りながら、わたしはPCの画面の文字を模様かなにかのように眺めている。
そもそもうちの会社は風紀に厳しい。
社内恋愛はよくても配置換え、双方の評価にも関わる。
社内結婚ならやんわりと女性側に依頼退職。
今どき、とも思うがそれが駄目という法律もないのが現状。
ちなみに不倫なんか問答無用で懲戒解雇だ。
『落ち着いた週半ばにランチでも?』
……たしかにわたしが倉沢さんにそう言ったけど、それどころじゃなかった。
あれから休憩室にも行かないようにしたし、極力席を立たなくなった。
さすがにうちの部署の上長にも近い席で、花邑くんも…ついでに倉沢さんも、下手なことはしないだろうと踏んでのことだ。
『どうしたの、今週忙しい?』
『体調悪い?』
自宅でも返信をしないわたしに倉沢さんが不審がっている。
なんどか彼からそういうたぐいのメッセージを受け取っていた。
そのたびになんと返せばいいのか、指をウロウロ彷徨わせ、結局スマホをデスクやテーブルの上に戻す。
夜はなるべく遅く帰るように気を付けてはいる。
でもそのうち、マンションに訪ねて来られるかもしれない。
わたしが生まれる前から鬼籍に入っている祖母。
いっそそれをもう一度危篤ということにして会社を休むとか?
……そしたら、今度は花邑くんに詮索されそうだ。
明日はもう歓迎会の日だし。
それをやり過ごしたら。
やり過ごしたら、なにもかも倉沢さんとは終わっちゃうんだろうか。
バレようが、わたしだけならまだ良かった。
花邑くんと話し合うだけなら?
ううん。 彼がどう出るのかが分からない。
ここのところ考えていた色んな疑問や推測が頭を巡り、だけど答えが出ない。