テキストサイズ

片恋は右隣

第4章 幸せになったらダメなんですか


****
歓迎会に参加する人数は約35人。

車通勤の人間もいるとはいえ、都会みたいに遠方から通っている社員は少ない。
バスやタクシーで帰ることも出来る環境なので、わりとこの手の集まりの参加率はいい。

オフィスビルの三階分の社員数は百を超えるためいつも人数は絞っているけれど、今日も同フロアの八割がたの人が集まっていた。

同期のよしみで、わたしは毎回幹事の花邑くんのサポートに回ることにしている。


最近ずっと避けていた彼。
それでも私事は置いておいて、今回も彼とホスト役に徹していた。

「すみません三上さん。 いつも助かります」

慌ただしく別注のドリンクやフードの采配をしている花邑くんが、食器などを片付けているわたしにお礼を言ってきた。
それになるべく自然な笑顔を返した。

いつも特に文句も愚痴も言わずに、彼はこんな時によく動く。
元々サービス精神が旺盛なのよね。

課長や部長相手に笑いを取ってる花邑くんをじっと観察する。
全体的に細い造りだけど、いつもナチュラルに笑んでるような彼の雰囲気は、他人から警戒心を失くす。

キスマークを付けられた際に、意外に彼の力が強いのに驚いた。
たしかに男性だからそうなんだけど。
あのときに、異性ということさえ今まで忘れてたことに気付いた。
……どう考えても、わたしは彼を『そういう対象』として見れない。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ