片恋は右隣
第4章 幸せになったらダメなんですか
「どゆこと? 会社にバレたくないでしょ。 倉沢さんとの待ち合わせの写真も証拠に持ってるよ。 三上さんも現に、いまもこうやって」
「たとえ花邑くんとそうなっても、立場が同じになるだけでしょ。 なんで分からなかったの? わたしそこまで馬鹿じゃないよ。 そしたら、このことも会社に話すだけ」
花邑くんが黙ったままわたしを見ている。
隙のなさそうな表情をしているけど、なんだか内心苛々してそうだ。
彼らしくないなあ、と感じた。
「そしたら花邑くん、退職どころか恐喝とか強姦で訴えられてもいいの? まだその歳で」
「三上さんにそんなこと出来る? 倉沢さんだって、ただじゃ済まないと思うけど」
そう言われてわたしの表情が曇ったと思う。
そんなわたしを見て自分が優位に立ったと感じたのか、彼が話を続ける。
「男にとってあの歳で二回転職って、世間的にきつくない? そうじゃなくても出世に響くし。 それにここ田舎だから、ウワサなんてすぐ広がっちゃうよね」
出来れば倉沢さんの話は出して欲しくなかった。
彼がそうしなければ、なんとか花邑くんのこの事は一時の迷いと思える気がしていたから。
「……いい子だと思ってたんだよ。 花邑くんのこと」