片恋は右隣
第4章 幸せになったらダメなんですか
喉の奥につんとしたものを感じ、すると自分が背中を付けていた壁の近くにあった出入口から、彼の声がした。
「────おーい。 三上さん大丈夫?」
室内で聞こえるぐらいだから、結構、というかかなり大きな声だと思う。
「はっ!? 倉沢? って……」
驚きで言葉を失っている花邑くんに理由を話した。
「わたし、ここに入ってからずっと通話中にしてたんだよね。倉沢さんに宛てて。 ていうか……あれ? あの人勝手に、わたしのスマホの設定GPS付きにしちゃってたみたい」
通話を終了させるために手に取って見ると、画面表示の位置情報のアイコンが有効になっていることに今さら気付いた。
なんかやたら来るのが早いと思ったら。
花邑くんは焦りさえ滲ませ、事情を飲み込もうとしているようだった。
騙すみたいで申し訳なかったけど。
「えと、花邑? いい加減にしとけよ。 こっちの履歴にも残ってんだからな。 ケーサツ呼ぶぞお前。開けろよ」
わたしから開けた方が早いのは分かっていたけれど、花邑くんが動くのを待った。
「……クッソ。 ここ住宅街だぞ」
その内容というより、とりあえず部屋の前で大声を張り上げられている状況をなんとかしようとしたみたいだった。