片恋は右隣
第4章 幸せになったらダメなんですか
でも、三年。
わりと長い間、わたしは好意を持たれていたらしい。
もう少し早く知ってたらなどと思ったけれども、きっと結果はおなじことだったと思う。
それでも、背中を向けて去って行こうとする彼に申し訳なく感じた。
「……ごめんね。 気付けなくて」
そんな役に立たない謝罪に花邑くんは振り向かなかった。
「三上さん、すぐ戻るから休んでて」
倉沢さんがひと言残し、室内にわたしが取り残される。
ふーっと、長い息を吐いた。
一週間分の緊張が解けたというか、気が抜けたというか。
なんにしろ、倉沢さんが来てくれて助かった。
わたし一人だったらたぶん、普通に襲われていた。
嫌なのはもちろんあるけど、それじゃきっと花邑くんも幸せになれなかっただろうから。
五分ほど経ったころだろうか。
ぼんやりとソファに座っていると、ガチャと音がして倉沢さんが扉から顔を覗かせる。
「もう平気? 三上さん、一緒に帰ろ」
「あっ、はい」
先に歩き、手を引いてくれているのは気を使ってくれているのか。
そんな彼に感謝をこめて「ありがとうございました」とお礼を言う。
「無関係じゃないしお礼はいいよ。 一個人でも同会社の人間としても見過ごせないでしょ」