片恋は右隣
第4章 幸せになったらダメなんですか
「……今回は妬きもちはないんですね」
「三上さんになにかあったらそれどころじゃないから」
そこは「心配かけてごめんなさい」とまた謝っておいた。
「だからそれは良いんだけどさ」倉沢さんが少し言いづらそうに口を開く。
「てかさ、三上さんっていつも、言葉足りなすぎなんだよね。いきなりキスマーク見せ付けられて、『もしわたしのこと信用してくれるなら明日の歓迎会のあと電話に出て』ってだけで。 あれじゃ分かんないよ」
「そうなんですけど……」
「おれが電話出なかったらどうするつもりだったの? 昨日会わなかったら? アイツと寝たんでしょ?」
分からない。
でも、今日の花邑くんの様子だったらそうなってたかもしれない。
口ではああ言いつつも、実際に彼を不利な立場に追い込むほどの強い気持ちはわたしにはなかった。
「事が起こった時点で、素直にすぐ助けてって言や良かったんだよ。 おれってそんなに頼りない?」
「うん。 その場ですぐに花邑くんに詰め寄りそう」
あのとき高確率でそう思った。
もともと曲がったことが嫌いな彼の性格からして、何ごともないとは思えない。
そしたら諸々バレるどころか下手したら暴力沙汰に……なんて、それは考えすぎかもしれなかったけど。
「そんなこと……否定出来ないか…な?」
「ですよね?」
「うーん。 でも、花邑と三上さんがそうなったらおれ、結構立ち直れないかも。 で、ホントのこと知ったらかなりキツいよ。 自分が情けなくて。 三上さんにそんな思いさせてまで守って欲しくない」
ぎゅっと強く手を握られ、顔が熱くなった。