片恋は右隣
第4章 幸せになったらダメなんですか
「こっちの気持ち分かるよね? だって三上さん、おれのこと考えて悩んでたんだよね。 通話中、妙に冷静だったから分かった。 三上さんと同じだよ」
「……でも、なんとなくだけど、どっかで信じてたような気もします。 倉沢さんの性格を知ってるから」
「おれもだよ。 今日や昨日知り合ったんならまだしも、昔の三上さん知ってるからね」
「わたしは倉沢さんみたいに目立つキャラじゃなかったですけどね……」
「目立たなくっても、良い子が悪い子かぐらいは分かるよ。 人間根本は変わんないんだから」
いつの間にかわたしのマンションの手前まで到着したようだ。
ゆっくり話しながら歩いていたせいもあり、時刻は夜の11時に近付いていた。
そこで手を離そうとする倉沢さんのつい手を握り返した。
「……これはどういう意味で?」
改まって訊いてきた倉沢さんをちょっと不思議に思った。
そこで正直に話してみた。
気が抜けた反動か、精神的に堪えていたらしい。
手を離されそうになった途端、落ち着かなく不安な気持ちになったから。
「一人でいたくないというか。 けど、エッチな気分にはなれない……って、ワガママかな」
「全然。 あんな事あったんなら仕方ないよ。 それに三上さんが我儘言うとかこう、ぐっとくるよね」
「そうなんですか?」
「普段甘えない彼女に甘えられるなんて嬉しいしかないから」
「だから彼女っていうのは」
「ぶっ…またそこ?」