片恋は右隣
第5章 わたしを愛してくれるんですか
「曲がっても元に戻るし、大したことないんだけどね。 昔部活でも何人かやってたし」
「大したことあるってば! だってなんか倉沢さん、ホテルの部屋で妙に落ち着いてたから、ちょっと違和感あったんだよ。 そしたらやっぱり」
つい咎めたててしまったこちらの口調に、倉沢さんがまたシュンってしてるけど知らない。
お店を出たあともギスギスした雰囲気で、彼が遠慮がちに声をかけてくる。
「でも、そんなに怒らなくっても。 そういえば三上さん、今週末の予定は?」
「そんなの知らない。 わたし、こんなことにならないように頑張ったのに」
「どうしたら許してくれる?」
本来的にわたしが許すとかそんな問題じゃない。
彼のしたことはただの過剰なパワハラだ。
まるで鷹揚な彼の態度が気に障るというよりも、自分には理解しがたかった。
「花邑くんに謝って」
「それは無理」
「なんで!?」
とっさに彼を見上げたわたしに向かって倉沢さんが開きかけた口を閉じる。
それから一瞬だけためらってから、また話し出した。
「彼のやったことを肯定する気になれない。 謝るって、そういうことでしょ」
「だからって、行き過ぎな行為だと思うし、社会人としてどうなの? ホテル側の防犯カメラに映ってたりしたら」
「それは心配ない。 絨毯のクリーニング代請求してもらうようにホテルに頼んだし、彼のことも、ちゃんと病院連れてってもらうようにタクシー乗せたし」