テキストサイズ

片恋は右隣

第5章 わたしを愛してくれるんですか


彼の返答に考えようとして歩を緩めた。

「昼終わるまで、まだ少し時間あるよね」

歩きながら話すのは落ち着かないと思ったのか、倉沢さんが一本右折した脇道へとわたしの手を引いた。
その通りにドラッグストアかなにかの店舗の駐車場があった。
ちょうど大通りや日差しの陰となっているところで、彼と距離を置いて向かい合う。

「あのさ、未遂で終わったけど昨晩、三上さんずっとおれにしがみついてたよね? 正直、治る怪我ぐらいなにって思ってるよ」

眉をひそめてそう言う彼は、優しいのか冷たいのか。
冷静なのか考えなしなのか。
測りかねてわたしがしばらく黙った。

「……花邑くんだって心はあるよ。 いつもの彼は、わたしや周りの人にも公平で親切な人なんだよ。 倉沢さんこそ普通の顔して、花邑くんのこと嘘ついたよね」

「まあ……三上さんのそういうリアクション予想出来たから。 普段の親切がなんの理由になる? 好きならおれが出てくる前にでも告白すりゃ良かったんだよ。 フラれる覚悟もないのに、無理矢理言うこときかせる気はあるって、人としてどうなの」

「みんなが皆、倉沢さんみたいに自分に自信あるわけじゃないんだよ」

同期で仲も良かった彼。
もしも花邑くんがわたしとその先を望んでいたとしても、そこから進むのには普通よりも躊躇したんじゃないだろうか。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ