
片恋は右隣
第5章 わたしを愛してくれるんですか
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昼間にあんなに晴れていたお天気は夕方になるにつれて崩れていったようだ。
終業前にはフロアを囲んでいる窓に、いくつもの雨粒が集まっては流れているのがみえた。
ここ最近の朝晩は冷える日もある。
『おれはいつまで三上さんのペースに合わせればいい?』
たまに顔をあげては窓を眺めながら、わたしは倉沢さんに言われたことを考えていた。
合わないのなら彼はいつでも引くことが出来たはず。
それならそうすればいい、なんてあの時の自分の頭には無かった。
いまもそう思う────きっとわたしは鈍感な上にずるいんだろう。
午後はあまり仕事に集中できなかった。
自業自得な残業のお陰で、いつの間に外は薄暗さが増していったようだ。
折り畳みの傘を差し、ぶ厚く濃灰の雲に覆われた空を見あげた。
「倉沢さん、傘持ってきてたのかな……」
そんなことをポツリと呟いた。
雨がパタパタと傘に降りかかる。
目で追えないほど細い雨だれは、秋の夕立ちによく見る景色。
地面にはいくつもの小さな水たまりが出来ていたので、これでもすこしは小降りになったらしいと思った。
