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片恋は右隣

第5章 わたしを愛してくれるんですか



「傘しまっていいよ。 ああ、言い忘れてたけど最近女性らしくしてるね。 髪も括ってないし」

「ええ? ああ…ありがとうございます。 それより」

倉沢さんがずかずかとマンションに入っていき、セキュリティロックにキーを差す。
するとすんなりと入り口の自動ドアが開いたので驚いた。
いままでちっともそんな話は聞いてなかったから、てっきり物件を見つけただけかと思ってたら。

「いつものワイシャツとパンツ姿もいいけど、タイトスカートもいいよね。 三上さん、膝とか腰のラインがキレイだから」

背中から腰の辺りを指先で触れられ、反射的にビクッとなった。
どうでもいいけど、なにやらさっきから微妙に会話が成立してない。

「ちょっと……触るの止めて?」

そもそも、わたしは───倉沢さんに話をしに来たはずで。

それがなんで、セクハラ紛いの褒め殺しと痴漢行為にすり変わってるのか分からない。
エレベーターの前で今度は太腿に手を沿わせてくる倉沢さんの扱いに困った。

「怒られて泣いてる子供とか、抱っこしてあやすよね。 そんな顔してたから。 とりあえず落ち着いた?」

彼がストン、とやっと下に降ろしてくれて、清潔そうに光るタイルの上に自重を踏みしめる。

なるほどあれは痴漢ではなかったのか。
それにしても、なんでわたしが慰められてるんだろう?


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