片恋は右隣
第5章 わたしを愛してくれるんですか
俯きがちに安堵らしきため息をついてから、倉沢さんが話を続けた。
「……むしろまた、今回もこのパターンかって。 さっきおれの家の前での三上さん見て正直、もう会わないとか言われる話かと思ってたんだけど。 三上さんって、いい意味でも悪い意味でも律儀そうだから」
たしかにこの人ちょっと中身残念だけど。
完璧超人だったら、逆にわたしとはもっと合わなかったんじゃないのかな、なんてことも思う。
「倉沢さんも大変なんですね……」
足を投げ出し、力が抜けたみたいにズルズル壁にもたれ掛かる倉沢さんの前にしゃがむと、彼がどこか拗ねたようにわたしを見る。
「他人事?」
彼が伸ばした指先がわたしの髪にかかり、頬に触れ、それから柔らかく自分の方に引き寄せた。
額に倉沢さんの首すじがあたる。
「それにしても、なんでわたしをここに連れてきたんですか?」
「さっき言わなかったっけ。 場所覚えといたらいつでも来れるしって」
「もう会わないってわたしが言うと思ってたのに?」
「そういうのを言わせないために。 外で逃げ道作っとくと逃げちゃうから……って、バレてた?」
なんとなく歯切れが悪く答える倉沢さんにわたしは苦笑いを返した。
話聞かなかったり勝手に人のこと運んだり。
冷静に考えると、罠を仕掛けられたと思えないこともない。
「思いっきり不自然でしたから。 監禁でもするつもりだったんですか? それにわたし、逃げないですよ。 話したかったので」