片恋は右隣
第5章 わたしを愛してくれるんですか
「────あれ? 倉沢さんの家の前で会ったのって……」言いかけるわたしを無視し、頭をさげた倉沢さんがこめかみに唇を軽く押し付けてくる。
部屋に来たときに電気がついてたから、これもたぶん、偶然じゃなかった?
GPSを切っておくのを忘れてたことを思い出す。
「三上さんの濡れた髪、いい匂いする」
つつ、と昼間鎖骨につけられた跡を彼が指先で撫でてきた。
そして知らない間にそういう雰囲気っぽくなってる。
「ちょっと……待って下さい。 濡れちゃうから」
わりと長い時間外にいたから、足や髪先が濡れていて、新居を汚すようで忍びなかった。
「それ、主語がないとエロいよ」
避けようとすると彼がわたしの両側に腕をついて迫ってくる。
腕をどけようとしてもちっとも動かないし。
彼から顔をそむけたわたしは、いつの間にか、仰向けで肘をついてる体勢になっていた。
その視界の下で、前髪から覗く倉沢さんの口許が小さく緩んでるように見えた。
「ベッドまだ作ってないから、するつもりはなかったんだけど」
「そ、そう、ですよね?」
なんで前々回に引き続き廊下なんだろう。
廊下でするのが趣味なんだろうか。