片恋は右隣
第5章 わたしを愛してくれるんですか
少しばかり油断してそんなことを考えた。
その間に、ブラウスの前の下着が丸見えになるぐらい大きく開かれている。
相変わらずそつのない。
ブラの布地を下げ、わたしの視覚を倉沢さんの頭が遮る。
胸元の肌にぬめった感触が這うのが分かった。
「いっつもだけどおれ、三上さんに煽られてるような気がすんだよね。 そりゃ、人並みに好きだけど……なんだろ」
そ、そんなのしらない。
「待って…っください」
「さっき逃げないっていったよねえ?」
ドヤるように言われて口をつぐむ。
時おり睡液の湿ったリップ音が聴こえて吐く息と一緒に、胸にひんやりとした空気を感じた。
倉沢さんが胸先を避け、口での愛撫を続ける。
あちこちの肌をくすぐる舌や唇はとても穏やかで。
体を支えていたわたしの腕から自然に力が抜けていく。
完全に自分の背中が床につき、そしたら感覚が余計に鋭敏になった。
「やっ…あ、やだ」
漏れ出る声は否定を含んではいる。
それは官能の疼きを持ち始めて焦れた自分に対してかもしれない。
未だに胸の脇に浅く口付けてる彼がもどかしく思えた。
それにしてもわたしって、いくらなんでも節操がなさすぎるんじゃないの。
上目遣いの倉沢さんとぱちっと目が合い、彼が声を出さずにまた笑う。
といっても……可笑しくてそうする種類のものじゃなく、微笑む感じに近い。
顔は火照ってるし、これだけでもすでに涙腺が緩みかけているわたしを、変に思ったのかもしれない。