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片恋は右隣

第5章 わたしを愛してくれるんですか


まるで余裕のない吐息混じりの声は、彼を包むわたしの内側をすぼませた。
うなじの辺りに唇を押し付けられ、くぐもった息がかかる。

「はぁっ……もう、勢いで言う。 おれのになって。 こっちはもうその必要はないけど、美優は知りたいんだろ」

容易にこちらの体に回った腕がきつくわたしを拘束し、こんなときの彼はずるいと思う。
力も強い言葉も自分は持っていないから。

「さっきの返事。分かりやすいゴールがみえないんならおれは断る。 美優はおれがほかの子としても平気?」

「仕方ないと……思う。 軽はずみに付き合って、傷つけ合う……ぐらいなら。 わたしは……倉沢さんに、いやな思いをさせたくない」

倉沢さんが大事だから。
昼間の彼のあんな顔はもうみたくない。
それともいっそ幻滅されて別れた方がいい?

頭がうまく回らない。

「平気かどうかを訊いてる。 こっち向いて」

くい、と手のひらでわたしの顎の向きを変えてくるけど、彼と目を合わせられなかった。
だって、なんで彼はこんな時にそんな話をするんだろう?
身を固くしてるわたしの胸を彼が手で包み、指が沈む。

「……っん」

「YESっていうまで離さないし、なんならこのまま中で出すよ。 できたらそれこそ逃げらんないよね?」

一瞬なにを言われてるのか分からなかった。

「……ああ、そっか。 三上さん、社内恋愛のこと気にしてたけど、そしたら解決だ」

淡々と話してくる彼に戸惑うも、いつも通りの倉沢さんの様子。
ますます混乱して、ふるふる首を左右に振った。

たしかにいま、避妊してない。


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