片恋は右隣
第5章 わたしを愛してくれるんですか
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「ごめん、ちょっと服にかかった。 まさかホントに出すわけにもいかないしね。 ん? どうしたの」
「…………」
終わったあと、わたしはしばらく顔をあげられなかった。
倉沢さんの方も結構動いたせいか、終わったままの体勢でまた壁にもたれ、Tシャツの裾で額の汗をぬぐっていた。
自分の痴態を思い出すといたたまれない。
また流された?
また騙された?
いや人のせいにしちゃダメだ。
もうわたしは立派な大人なんだから。
心のなかでぶつぶつと呟いているわたしを倉沢さんが不思議そうに見ている。
「美優、明日予定なかったら荷解き手伝ってくれる? 夜は美味いもの食いに行こう。 ああでも、その格好じゃ外に出れないね。 スカート汚れちゃったしパンツもビショビショだし? 残念だよね。 とりあえず今晩ベッドは作るから、週末はずっと一緒に過ごそっか」
倉沢さんがそんなことをニコニコしながら言ってくる。
もう完全に名前呼びだし。
パンツ履いたまま致したのは微妙だけど、スカート汚したのはあなたじゃないですか……。
「あそこにある乾燥機は……」
わたしが指でさしてる、脱衣所らしきところの前に置いてあるダンボール箱には乾燥機と書いてある。
それに倉沢さんがしゃあしゃあと答えた。
「ああ。 引越しのとき壊れたのかなあ。 さっき出したけど、動かないからまたしまったんだよね。 それよりシャワーに行こ。 汗かいたし」
壊れたとか絶対ウソだ。
「だからシャワーはわたしはひとりで」
「おれの着替え貸して欲しくない? ブラウス一枚のノーパンとか……待てよ、それもいいな」
「……それ以上すると泣きますよ」