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終焉告げる金色の蝶と死想の少女

第3章 金色の蝶

ローエンの言葉の真意はわからないが、おそらく“正しい”。


確かに交わした約束。どうして違えるとわかってて、あの時あの人にああ言ったのか。月伽は金木犀の香りを想い出す。懐かしくて痛い、秋の桜のような存在、だった――自分にとっては。



月伽の中で泡沫の記憶が浮上する。


希石が世話をしているアルカナ庭園は、学園で観光地のような賑わいを見せる場所で、英国の庭のようだ。


アンティーク調のガーデンオーナメントに、庭を埋め尽くす薔薇。他にも釣り鐘型の花を咲かせるカンパニュラ、鈴なりの花をつけるルピナス――希石先輩が、花について語るからそれを聞いているうちに覚えてしまった。


そんなに花には興味ありませんでしたが……あなたの好きが移ったんでしょうね。 



でもあの日の言葉に、“嘘”はありませんよ希石先輩。


今度こそ、はっきりと告げる。


「それでも望みます。そのために、ここへ来たのですから」

「そうですか。――月伽の望む終焉を差し上げましょう、私が告げます」



月伽の視界が手で覆われる。夜が降りてくる、ローエンの言葉と共に。光も何もない。どこまでも深い深い闇が、降りてくる。

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