鬼の姦淫
第1章 血のおくり花
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週に二度、お父さんに車で送ってもらい高校に行く。
その朝も私とお父さんは隣の市へと向かった。
山あいの景色の移り変わりは早い。
色づき始めた木々の稜線がとおくちかくと、冴えた空の下でいろどりを添えていた。
町内には現在、小学校が三つある。
私が通っていた所は何年か前に閉校になった。
それからもう随分と経つ。
取り壊しもされず、山の中にある古びた校舎。
手入れのされていない鬱屈とした様相をかもし出している。
そんな景色を車窓からみていた。
お年寄りがいうには、そこにはなにかが祀ってあるのだと言う。
祟りだなんだと、そんな迷信をこのご時世に話す人がいる────そんなどうでもいいことは置いておいて、あの近くに若林くんの自宅がある。
『─────無くなっちゃうのは寂しいことだね』
あの校舎を眺め、時おり愛理がポツリと呟いていたのを思い出す。
「お父さん 、今日私、ちょっと部活のことで遅くなる。 紗英ちゃんのお家に集まるから」
「紗英? ああ、松本さんか……高校のすぐ近くだな。 終わったら連絡しなさい。 くれぐれも気を付けて」