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鬼の姦淫

第2章 社の守り人



「……義隆はじきに戻るが……そうだな。 本人の居ない自宅に呼ぶのも無作法かもしれない。 うちはなにしろ男所帯でな。 なにやらあそこに興味を持っていたようだが?」

その人が顎で指した方向は、先ほどの民家のような建物だった。

「あ、はい。 でも……さっきの人が近付くなと。 私が小学生の時は、あんな立派な建物ではなかったような気がするんですが」

「迷うたが……あまりにも荒れて不憫だったのでな。 あれは寺や神社のようなものと似ている。 それよりずっと前は、ここいらも女人禁制であったし。 だが今となっては……そう神聖視するものでもない」

ゆっくりと言葉を切ってそう言うと、その人がすっと私の前を通り過ぎてその方向へと向かった。
ついて来いということだろうか。

お寺や神社────そういえば、たしかさっきの男性は『お社さま』と言っていた。

ということは、この若林くんのお兄さんらしき人はここの住職さんか神主さん?

よくよく考えても、暴力団の人にはとても見えないもの。
そう考えると、この人のどこか浮世離れした雰囲気も合点がいった。

若林くんを待ってる間にお参りするのもいいかもしれない、私はそう思い、砂利道を踏みしめる彼のあとに続いた。

最近建て直したにしては、よく見ると古い木で出来ていた。
遠目でも安っぽい建物にみえなかったのはそのせいかもしれない。

五段ほどの階段があり、その人が入り口の引き戸を左右に開いた。
神社によくある、大きな鈴やお賽銭箱が無いだけで、まさに神社といった風情だった。



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