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鬼の姦淫

第2章 社の守り人


けれども『退屈していたところ』この人はそう言った。
その言葉どおり、なんというか、悪いことをしているという気があまりしない。

外からは雀かなにかの小鳥がさえずる声が聴こえてくる。
私は与えられる刺激に足先をたまに畳に滑らせながら、初めて会ったばかりの男性に身を任せていた。


「義隆はお前に触れないだろう? だが情愛がないわけではない。 あまり不穏に思うことはない」

そんなことを言われても、私と彼はそんな関係じゃない。
言おうとしたけど、やっぱり話せなかった。
どうやら若林くんのお兄さんらしきこの人は、なにか勘違いをしているらしい。

そう思っているうちに少しずつ、動きが強くなってくる。
胸先がクリクリ捏ねられて、今までよりも鋭くきつい感覚に驚いた。

『あ、いやっ』

「こうされるのは嫌か」

あっさりとそこから手を離される。

「たしかにわたしは義隆ではないからな。 迷い込んできた雲雀が可愛かったから」

私の体を隠すように衣服を中央に寄せ、ふわりと頭を撫でてくれている。

きっとさっきみたいに微笑んでいるのだろう。

────若林くんのお兄さん。
彼ももう少し経ったらこんな風になるんだろうか。
優しいのは今もだけれど、ゆったりとしてどこか人を惑わせるような魅力のある。


「全く……もう少し愉しみたかった気もするが……仕方がない。 萌子、目を開けて衣服の乱れを直した方がいい」

「………い……あ…れ?」

息を吐き出した途端、普通に声が出て目を開いた。

「わたしの名は仲正だ」

ナカマサさん。
唇を動かして名前を繰り返すと、軽く頷いてその人がすっきりとした目尻を細める。

それとほぼ同時に、もう薄暗い外から誰かが入り口に立ったのに気付いた。


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