鬼の姦淫
第2章 社の守り人
「親父。 家に居ないと思ったら。 何してんだよ、こんな薄暗いとこで」
「え?」
あれは……若林くん?
「……は? 萌子」
お父さん……って。
さっきまで膝の上で肩を抱かれていたのに、今の彼は私と距離を取ってきちんと座っている。
「放っておくわけにもいかないし、若い娘さんと二人っきりで自宅というのも外聞が悪い。 ここでお前を待っていた。 あとから茶でも持ってこよう」
のんびりとそう言い、よいしょと立ち上がった若林くんの……お父さん。
「早瀬の叔父さんが来てる」
「そうか。 彼には礼を尽くさねばな。 お前もいい加減に戻るといい」
この人、どうみても二十代にしか見えないし。
事実私たち、自宅とか関係ないことをしていたし。
私たぶん、顔が真っ赤だ。
暗くって助かった。
ついでにいえば、声が出せなくってよかった。
まだくらくらする頭でそんなことを考えた。