鬼の姦淫
第2章 社の守り人
「……なにか、されたか?」
緊張した声でそう訊かれ、自分の体が少し強張ったように思う。
「な、なにも……なにかって」
目線を落としてぎこちなく答え、すると突然彼に両肩をつかまえられた。
「い…痛っ」
「萌子。 ええと、どういえば……何かに傷付けられたり、そんなことは?」
「ないよ!」
あんまり若林くんが真剣な顔で訊いてくるので、反射的にそう言った。
「そうか……?」
よくよく考えると。
仲正さんにちょっと…少しだけ、いやだいぶエッチなことをされたとは思うけど。
「萌子? 顔が赤いけど」
「し、照明のせいだよ。 っていうか、肩が痛いんですけど」
「あ、ああ……悪い」
すぐに手を離され、どこか気まずい空気が流れる。
そもそも、私は嘘つくのや隠しごとが苦手だ。
「お父さんが謝ってたよ。 若林くんがついてれば……ああならなかったのにって。 うちのお父さんだったらそんなことは言わないもの。 いい人だね」
「……意味合いが、少し違う」
「え?」
「おれが愛理と付き合ったのは、彼女を死なせたくなかったからだ……ありがとう」
「…………」