鬼の姦淫
第1章 血のおくり花
それだから私は若林くんの制止を必死に振り切り、愛理の元へと走った。
「萌子!!」
「愛──────」
その名のとおり彼女を見たり接する人はみな好感を持ってしまう、そんな女の子だった。
「あ」
こんなに腫れ上がってでこぼこしてるのが人間の顔だと────ましてや彼女なのだと私は認識出来なかった。
髪に包まれ裸の肩の上にあったから、ようやくそれが顔なのだと分かっただけだ。
目の位置もよく解らないし、土がこびりついた肌の色は…肌なのだろうか?
茶や青や黒がまだらになって、元の彼女の名残などなかった。
彼女の周囲だけが赤かった。
赤やピンク染まった菊の花が彼女を囲っていた。
それはしずくのように滴っているとか飛び散っているいうよりも、まるで血を吸い込んだような花弁の色だった。
愛理は向こう側を向いていたが側頭部は赤黒くえぐれ、髪を巻き込み、海が汚染されたタールみたいに脂ぎって光ってるみたいだ。
「い………」
その場で私の膝や腰から力が抜けた。
辛うじて半身を手で支えて座り込む。