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鬼の姦淫

第4章 記憶



「あれ? 二人ともまだ残って……いやなにしてんのそれ」

外もすっかりと暗くなり、戸を開けて教室に入ってきた若林くんが呆気にとられて私たちを見る。

「委員、会っ、のしっ、ごと! 乙!!」

「さむ、くてっ! しらな、い? おしくら、まんじゅぅ!」

高台にある田舎の高校の冬は寒い。
放課後には一部の施設を除き、教室の暖房も切られるので、たまったもんじゃない。

ということで、私と愛理はこうやってくっつきながら動いて暖を取ってたわけだった。
若林くんを待ってたついでに。

ほっ、ほっ、ほっ、と餅つきみたいに声掛けをしてる私たちを見て、若林くんが、ブッと噴き出した。

「ふはっ……んな高速なおしくらまんじゅう初めてみた」

「ダイエ、トにも、なるよ!」

若林くんが入口でしゃがみぷぷぷと笑う。

「放課後、期末の勉強しなきゃって言ってたくせに」

「若林くんのヤマ当てにしてマース!」

「わたしも! お礼に暗記モノは任せてくだサーイ」

「どう礼になんだよ」膝の上で腕を組み、彼が楽しげな表情でこっちを眺める。

「……けどさ、それ、若干愛理のが可哀想だよな。 負担的に」

「ど、どういう意味!」

「ふーっ。 あったかくなったあ、疲れた!」

息切れを起こした愛理が中腰の私の上をズリズリと器用に登ってきた。

「ちょっと、愛理も人の背中で休まないで!!」

「そりゃー安定感あるからだろ」

「コリがほぐれるうぅー」


そこで私はハッとした。
──────そもそも。
こんなことばっかりやってるから、この人たち、付き合ってもなにもないんじゃないの?

「ははっ。 お前らっていっつも、猫かなんかがジャレてるみたい」

彼らのケラケラと笑う声を耳にしながら、私がそんなことに思い当たる。


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