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鬼の姦淫

第4章 記憶

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────懐かしい夢だった。

二度寝入りのあとだったからか。
夢というよりは、私の過去の大事な思い出の切れっぱし。
こんな朝は誰かにとびきりのプレゼントをもらったみたいな気分になる。


私は今なら少しは、あのときの愛理の気持ちが分かる。
自分のこれはどこにも向いてない────単なる欲望に過ぎないけれど。

『おれは自分やお前の気持ちがどこに向いてるかなんて分かってた』

最後に彼が言ったその意味を私は考えたくなかった。
時が経てば経つほど思う。

二人には自分の記憶のままの、そのままでいて欲しい。

うとうとと微睡みをくり返し、そうこうしているうちに外が白んでくる。
起きるまでにはまだ早い時間だった。

ベッドの中で薄い毛布に体をくるんでいた私は度々そうしてるように、つつ…と足の間に指を忍ばせた。

「は……ァ」

昔よりも膨らんだ自分の胸や、時々どうしようもなく持て余す性の渇き。

すっかり日常に溶け込んでしまった自慰で、早々に愛液を絡ませた肉芽を自身の指で淫らに擦る。
硬くなりかけた突起に触れるももどかしさに我慢が出来ず、胸の先を緩くつまんだ。

それでもちっとも、満たされない。


自分がこんな風になったのは、愛理が亡くなり、若林くんと会った最後の日辺りからだったか。
彼のつたなく熱い口付けのせいか。
その前に仲正さんに優しく触れられたせいか。

自分の中の記憶は曖昧だ。


私は今年、23歳になった。




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