鬼の姦淫
第4章 記憶
女性が藪の上に仰向けに寝ており、両脚が開いていた。
時おり足先が動いていたから、生きてるんだろう。
『生きて』────とっさにそんなことを思ったのは、なにかが後ろ向きになって女性にのしかかっていたから。
『それ』はたしかに生き物だと感じた。
動いているし、空気の抜けた、呼吸音かなにかの音を発している。
形状はところどころこぶのある、歪で大きなこけしのようなものだ。
薄く張った皮膚一面に暗い模様を描いていた。
いや、目を凝らしてよく見ると模様じゃない。
一番上の方から太い髪の束に似たものが、ゾロゾロその生き物に巻きついている。
細長い軟体動物さながらの髪の束は別の生物のようにも見えた。
手足のない人のような。
色は虫のようで。
遠目ならば大きな動物だと思ったかもしれない。
なんとも言えない、奇妙で不気味なものだった。
そんなものが女性の足の間に張り付いて、単調な上下運動を繰り返していた。
女性の膝がそれに合わせてせわしなく揺れている────信じがたいことに、それがなにをしているのかは明らかだった。
太い髪に巻き付かれた皮膚が打ち下ろすたびにへこみ、その隙間を茶や濃い緑に色を変える。
「時招、まだ間に合う」
「そうですね。 一匹だけですし、今のうちに」