鬼の姦淫
第4章 記憶
眉根を寄せて硬く閉じられたまぶたがピクリと動いたのが解った。
女性の下半身が丸出しなのに気付き、太腿をめくれていたスカートで覆う。
自分の胸の、ドッドッドッという、騒々しい鼓動で体が小刻みに揺れる。
双子からはまだザクザクものを刻んでいる音が聞こえてくる。
「もうそろそろ、いっかな?」
「吐精でもされたら死ぬまで付きまとわれますからね」
彼らの方に目をうつすと、庭石ほどに小さくなった生き物が薄黒いもやとなって消えかけていた。
「うーん。 にしても、ヤシロ様みたいに完全にはムリだな。 結局また生き返っちまうから」
「き……菊」
「え?」
「菊の……花が、ない」
無意識に呟いた私の言葉に、双子は顔を見合わせた。
「そりゃ僕らはただの……というか、なんでそれを知ってるんです?」
「坂下センセ、もしスマホかなんかあったら────あー、ダメかあ」
目の前が暗くなり、上から下へと血液がサァっと引いていく感じがした。
「最初っから顔真っ青でしたもんねえ……」
自分の上半身がその場に崩れ落ちていったのが分かった。
双子の声が心音に混ざり遠くなっていく。
ただ、自分の額にあたった女性の腕は温かく、それだけはほっとしたのを覚えている。