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鬼の姦淫

第5章 地下の墓


……私はあれから何度かは考えた。
一方的に私を拒絶したのは、若林くんの方。

友だちなんて、本来は何も言わずとも勝手にそうなるもので、無理に関係を結ぶものではないはずだ。

だとしたら無理に終わらせた彼は正しいのか。
そんな疑問がこの年月の間に少しばかり解けた。

「愛理……は、あれに殺されたの…? 鬼に?」

あのときのキスの意味。
少なくとも、終わらせるために彼は友人の域を超えた。

それなら私も、私にも……それを拒む権利が少しはあったんじゃないか、と。

彼の眉は動かず、私にはその心中を読むことができなかった。
賑やかなタイプでなかったけれど、私の中の彼はよく笑う人だった。

「女性に危害を加えるのは鬼ではありませんよ。 悪鬼なんかと同列にされては心外です」

「むしろヤツらをやっつける為に、オレたちが復活したんだもんな!」

その前に口添えをしてくれる双子の方へと目を向けた。

「それもこれもお社様のお力だ」

五嶋さんが恭しげに目を閉じて頷く。

ここが五嶋さんの自宅だとすると、若林くんの家にも近いのだろう。
こんなときにあの人が居ないのを不思議に思った。

「仲正さんの力? そういえば、仲正さんは」

私がそう訊きかけると若林くんが遮るように話に割って入った。

「萌子、お前はもう帰れ。 五嶋さん、佐伯さんはどこ?」

「は、はあ。 佐伯なら自宅に」

「佐伯さんに萌子の送り頼める? 学校から預かってきた私物、そこにあるから」

「……? 若林くん、ちょっと待って……」

『萌子』
彼の呼び方は昔から変わらない。
ただ、私に命令じみた口をきく。
その癖に他人行儀で。

それらの彼の言動は矛盾してるように思えた。



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