鬼の姦淫
第5章 地下の墓
「まさか呼ばれたからって、こんな早くにノコノコ来るとは思ってなかったけどな」
若林くんが一歩踏み出し、入り口近くに立っていた私の目の前で向かい合う。
昔よりも一回り大きくなった。
そんな男性に硬い表情で前に立たれると、妙な威圧感がある。
「呼ばれてってなんのこと? だって、あんな風に、なんの説明もなく一方的に言われたら困るよ」
なぜ若林くんは今もなにも無かったかのようにしたがるのか。
私たちが一緒に過ごした日々を。
「知らないで済むならその方が良かった。 愛理が戻るわけじゃない。 いまも正直、面倒臭い」
投げやりな口調と同時に、私の肩に彼の手が伸びる。
「それは若林くんだけが決めることなの? ……っなに」
顔を傾けた彼が、髪を掻き分けた間の私の首すじに寄り、なにか生暖かいものが肌を撫でる。
彼の額や鼻らしきものが一緒に当たった。
近過ぎて後退りそしたらまた若林くんが足を進める。
背中を壁に押し付けたまま……私に被さる彼と、ぬめったなにかが首の下から上へと移動していくその感触に混乱した。
「ちょっ……」
「身に覚えない? こういうの」
「ど……どうし…」
「自分の体が変わったとか……正しくは抑えられなくなった? 都会ではずいぶんと遊んだ」
耳元で小さな声が聴こえ、吐息が皮膚をくすぐった。