🥀Das Schloss des Todes🥀
第1章 mein Prinz
その日は日曜の朝に教会に行けなかった。
前日、上手く寝付けなかったからだ。
次に目覚めた時には正午だった。
「教会に行くだけよ。」と何度も言っているのにも関わらず、酒の匂いを纏わせながら行き先を執拗に聞いてくるアイツとは対照的に、お兄ちゃんは「行ってらっしゃい」と微笑みを浮かべながら私を見送ってくれた。
夕礼拝は約1時間弱。
主日礼拝よりは短めな礼拝を終えて帰路につき、いつも通り玄関扉を開けた。
気の所為か、いつもより静かだと思った。
テレビの音どころか生活音もしない。
やたら大きな音を立てて室内を歩き回る
呑んだくれのアイツが寝たのだろうか。
そんな風に考えながら、私はリビングに足を踏み入れようとして
独特な鉄の匂いと事故現場とも言える惨状に
思わず固まった。
ダイニングテーブル下のフローリングに、
憎くてたまらなかったアイツが転がっていた。
頭部から大量の出血があったのかもしれないが、激しく揉み合ったのか、テーブル上の数本のワインボトルがなぎ倒され、赤ワインと血が混じり合っているような悲惨な有様だった。
「ごめん。」
割れたワインボトルを手に一人棒立ちになっていたお兄ちゃんが、私の帰宅に気づいたのか、そう声をかけてきた。
お兄ちゃんの顔面は傷だらけだった。
上半身の服はナイフのような刃物で切り裂かれていて、はだけた胸元から歯形がくっきり見えた。
「お兄ちゃんは全然悪くないから。」
震える声でそうお兄ちゃんに伝えた。
だけど、お兄ちゃんは口元を歪めて首を横に振った。