🥀Das Schloss des Todes🥀
第1章 mein Prinz
このまま窒息するのではないかという恐怖に包まれていた所、パッと室内に明かりが灯った。
背筋が凍るような冷気も感じない。
ドアノブに手をかけたいところだが、強い息苦しさを感じて立ち上がれない。
コンコンとノックがあった。
その後に「クララ、大丈夫かい?入るよ。」と声が聞こえた。
ああ、お兄ちゃんの声だ。
そう確信した私は大粒の涙をこぼし始めた。
そして私の自室に入ってきたお兄ちゃんは、
過呼吸になった私を見て酷く狼狽していた。
けれど対処は迅速で。
私が言葉を発さなくても、立ち上がれない事に気付いたお兄ちゃんは、その場に腰を下ろすと私を優しく抱擁した。
そして耳元で囁くのだ。
「ゆっくり息を吸って吐くんだよ」って。
最初は吸ってばかりで上手く息が吐けなかったけど、お兄ちゃんが優しく私の背中をさすりながら「大丈夫だよ。」って言ってくれたから、段々胸の痛みも取れていった。
それから大体20分ぐらい経過して、
漸く酷い呼吸困難から解放された私は、お兄ちゃんの背中に両腕を回した。
「クララはすぐにキスをしたがるね。」
あどけない笑みを見せたお兄ちゃんは、そう揶揄しながらも、私の唇に自分の唇をゆっくり重ねた。
お兄ちゃんとの口づけに頭が幸せで一杯になって、その幸せが快感と共に引いていく時、私は、とある事に気付いた。
お兄ちゃんの顔の傷跡が消えていたのだ。
その上、引き裂かれた服も元通りで
本当に刃傷沙汰が起きたのだろうか?と不思議に思う程だった。